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Furusapo ニューヨーク駐在員 ニュースvol.2

ニューヨークの公共交通機関におけるサステナブルな取組み

ニューヨークを舞台にした映画やドラマを見ていると、必ずといっていいほど出てくる地下鉄。ニューヨークといえば地下鉄を思い浮かべる方も多いのではないだろうか?こちらで暮らし始めた当初は「ニューヨークの地下鉄=治安が悪い」というイメージがあり、乗る度に緊張していた記憶がある。メインの路線は24以上あり、マンハッタンを中心にブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランドに広がっている。マンハッタンの街中には至る所に地下鉄の駅があり、ニューヨーカーにとっては移動に欠かせない交通手段である。今回は、地下鉄をはじめとしたニューヨークの公共交通機関におけるサステナブルな取り組みを紹介したい。

地域レベルで目指すSDGsの実現

ニューヨーク市は、政治的・経済的・文化的にみても言わずと知れた世界で最も影響力のある都市である。一方で近年、急速な人口増加や気候変動、経済格差の拡大といった複数の課題に直面している。これらの長期的な課題に対処し、持続可能な発展を促進することを目的とし、2019年にOneNYC 2050を発表した。OneNYC 2050とは、国連によって採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を国レベルではなく地域レベルで実現するための具体的な行動計画である。8つの異なる分野から設定した目標の中には、公共交通機関の拡充や改善など、持続可能な都市交通の実現を目指した内容が含まれている。

公共交通機関の拡充と利便性の向上

地下鉄

ニューヨークの地下鉄は世界で最も利用されている公共交通機関の一つだ。かつては治安の悪さや老朽化が問題視されていたが、インフラの改善、技術革新への注力によって利便性が各段と向上し、現在これらの問題は改善されつつあり多くの市民や観光客に利用されている。改札口にはタッチパネルが設置されており、マイクロチップ付きのクレジットカードや、スマートフォンのApple payをかざすと入場ができる。これはOMNY(One Metro New York)決済といい、ニューヨーク都市圏の地下鉄やバスなどの公共交通機関で利用可能な決済システムである。従来から使用されているプリペイド式のメトロカードも使用可能だが、最終的に全ての公共交通機関に導入し、決済方法が統一される予定だ。日本のように事前に切符を購入したり、suica等にチャージする必要性がないため非常にシームレスで便利だ。また、一旦改札に入ってしまえばどこの駅まで乗っても、他の路線に乗り換えても一律料金(2024年1月現在2.9ドル)である点も、利便性が高い理由の一つと言える。

運行情報はリアルタイムに提供され、Googleマップで目的地までの経路を検索すると、遅延や運休等の情報を反映した最適な乗り換え情報を確認することができる。日本のように1分1秒たりとも誤差がない正確な公共交通機関とは違い、時間通りに運行することが珍しいニューヨークの地下鉄利用には欠かせない機能である。駅の設備の近代化も進められており、エレベーターやエスカレーターの設置、快適な待合スペースの提供など、利用者の利便性が高められている。治安の問題からあまり夜間に多く人が出歩くことはないが、24時間運行している点も利便性の高さの一つとして挙げられるだろう。これらの取り組みによりニューヨーク市の地下鉄は、持続可能な都市交通の発展の例として、他の都市にとってのモデルとなっている。

◇バス

マンハッタン内の南北の移動は地下鉄、東西の移動はバスが便利といったように、バスもまた主要な交通手段である。ニューヨーク市のバスは、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランドの各区を含む、市内の幅広い地域を運行している。これにより地下鉄やフェリーが行き届かない地域や、より細かい地域へのアクセスが可能になっている。

バスは地下鉄と同じMTA(The Metropolitan Transportation Authorityg)が運営しているため、OMNY決済の導入やリアルタイム運行情報の提供等、利便性向上のために注力している点は同様である。これらの取り組みに加え、ニューヨーク市はバス専用レーンの拡充にも取り組んでいる。これによりバスの運行効率と速度が向上し、渋滞の軽減にも寄与している。バス専用レーンの拡張は特に通勤時間帯の混雑緩和と公共交通の利用促進を目的としており、持続可能な交通システムの一環として重要な役割を担っている。

フェリー

イースト川とハドソン川に囲まれてマンハッタン島が位置しているように、ニューヨーク市は水路が豊富である。この水路を利用した効率的な移動手段として、地下鉄やバスと並んで重要な交通手段の1つがフェリーである。主なルートはイースト川を横断し、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランドを結んでいる。これに加えて、ニュージャージー州やロングアイランド、さらには近隣の他州へのアクセスも可能である。フェリーは地下鉄やバスと同様に、通勤者から観光客まで幅広い層に利用されており、特に朝夕の通勤時間には多くの市民が利用している。また、週末や祝日には観光目的で利用する人々も増え、ニューヨークの美しい景観やランドマークへのアクセス手段としても重宝されている。フェリーは、道路や鉄道とは異なる交通ルートを提供するため、都市部の交通渋滞の緩和および環境負荷の削減への貢献が期待されている。ニューヨーク市は、さらなるフェリーの利用促進を図るために、運賃割引プログラムの実施や、自転車持込料金の撤廃、また地下鉄やバスなどのその他の交通手段との連携を強化したシームレスな移動の実現等に取り組んでいる。

持続可能な都市交通の実現を目指して

先日カナダから友人が遊びに来ており、ニューヨークの観光名所へアテンドする機会があったが、公共交通機関の利便性に非常に驚いていた。地下鉄やバスに乗る際にチケットを購入する必要がなくクレジットカードを改札でかざすだけで良い点、自由の女神像があるリバティ島へ行くフェリー乗り場へは地下鉄の路線が3つ以上あり、どの駅からも徒歩数分でアクセスできる点、フェリーの乗車の際は事前購入したQRコードをかざすオンライン完結式のチケットレスである点など。普段何気なく利用しているが、改めてニューヨークがいかに公共交通機関の発達に注力しているかという点を再認識させられた。

SDGsの目標達成を目指し、OneNYC 2050を定めて取り組んでいるニューヨーク市にとって、公共交通機関の拡充および利便性の向上は、重要な取り組みの1つであることがわかった。次回は、「環境への配慮」という視点で公共交通機関の取組みや持続可能な都市交通の実現を目指すうえでの取り組みを報告したい。

文:山口友妃慧(Furusapo:ふるサポ ニューヨーク駐在員)


参考:OneNYC 2050 – NYC Mayor’s Office of Climate and Environmental Justice (cityofnewyork.us)(https://climate.cityofnewyork.us/reports/onenyc-2050/)、Action on Global Warming: NYC’s Green New Deal | City of New York(https://www.nyc.gov/office-of-the-mayor/news/209-19/action-global-warming-nyc-s-green-new-deal#/0)、MTA Zero-Emission Bus Fleet Transition(https://new.mta.info/project/zero-emission-bus-fleet)、6269_NYF_NYC_Ferry_Vision_9.4.indd (edc.nyc)(https://edc.nyc/sites/default/files/2022-07/NYC%20Ferry%20Forward%20Vision%20July%2014%202022.pdf)、

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