ニュース News

Furusapo ニューヨーク駐在員 ニュースvol.3 

ニューヨークが目指す“環境に配慮した都市交通”の発展

ニューヨークで私が最初に利用した公共交通手段は、地下鉄でもバスでもなく、シェアバイクである。最近、日本でもシェアバイクの取組みが始まっているが、先行するニューヨークの取組みを紹介したい。

ニューヨークでは、街中の至る所でシェアバイクのステーションを見かけ、日本では見慣れないスタイリッシュなブルーの自転車と、多くの人が利用している姿を見て非常に興味が沸いた。世界最先端の大都会の中で、カジュアルな服装でエコなシェアバイクに乗って移動する姿が、いかにもニューヨーカーらしく思えたのだ。今回は、ニューヨークがSDGs達成のために定めたOneNYC 2050のうち5つ目の目標である「持続可能な環境」の達成について、都市交通における具体的な取り組みに焦点を当てたい。

エコな交通手段「Citi bike」の利用促進

ニューヨーカーの足ともいえるこのシェアバイクは「Citi bike(シティバイク)」と呼ばれ、サンフランシスコに本社を置く運輸ネットワーク企業Lyft(リフト)が、ニューヨーク市と連携して運営している自転車シェアサービスである。街中に設置されたステーションに自転車が配置されており、短時間の移動に利用することができる。予めダウンロードした専用アプリで自転車に添付してあるQRコードを読み取ることで、自転車の利用が可能となる。アプリではGPSにより地図上に現在地が表示され、最寄りのステーションを把握することができる。情報はリアルタイムに更新され、現在利用可能な自転車が各ステーションに何台あるか、そのうちe-bike(電動アシスト自転車)が何台あるかまで確認可能だ。利用後は自分の好きなステーションに返却することができ、アプリ上で返却可能なスペースがある最寄りのステーションを調べることができ、非常に便利である。

Citi bikeは排出ガスがなく、都市の大気汚染削減や、気候変動の緩和に役立つ非常にエコな交通手段である。ニューヨーク市は、Citi bikeの自転車やステーションを増加し、利用範囲の拡大を計画するなど、利用促進に力を注いでいる。Citi bikeの利用促進によって期待される効果は、環境への配慮だけでなく交通渋滞の緩和や市民の健康維持への貢献など、持続可能な都市の実現に繋がる。またシェアという点においても、一人ひとりが自転車を所有する必要がなく共有することで、持続可能な消費モデルの促進に貢献している。

「Complete Streets」の概念

Citi bikeを利用して街中を移動していると、同じく自転車利用者の多さに驚かされると同時に、ニューヨークの街が非常に自転車移動に適していることにも気づかされる。殆どの道路に自転車専用レーンが設置されており、歩行者との衝突リスクを回避する工夫がされている。

ニューヨーク市は「Complete Streets(コンプリート・ストリート)」の概念を推進している。「Complete Streets」とは、歩行者、自転車、車、公共交通機関など全ての利用者にとって安全で使いやすい道路環境を創造することを目指す政策を意味する。これにより、年齢や能力に拘わらず全ての交通利用者のニーズに対応し、さまざまな交通手段の利用者が共存できるバランスのとれた道路環境を提供している。「Complete Streets」つまり「完全なストリート」を実現することで、交通事故を減少させ道路利用者の安全を確保すると同時に、歩行や自転車利用促進による環境への配慮、市民の健康的なライフスタイルの推進も期待できる。

環境にやさしいエネルギー使用

ニューヨーク市は公共交通機関に使用するエネルギーにおいても、環境に配慮した取組みを実施している。街中で、“HYBRID BUS”や“Clean energy bus”と書かれたブルーのバスをよく見かけるが、持続可能な都市交通の発展を目指すうえで、環境にやさしいエネルギーの使用は重要な柱である。公共交通機関では、特に電気バスの導入に力を入れ、これにより従来のディーゼルやガソリンを燃料とするバスに比べて排出ガスを大幅に削減している。この電気バスの運用拡大は、都市のカーボンフットプリントの低減に寄与するだけでなく、再生可能エネルギーの利用促進にも繋がる。また、地下鉄の運行においても、エネルギー効率を高めるための新型車両の導入が進められ、これにより運行コストの削減と環境への影響低減を実現している。

フェリーにおいても同様に、環境に優しいエンジン技術を採用した新しいフェリーが運用され、燃料効率の改善が図られている。さらに、公共交通機関全体では、代替燃料の使用や再生可能エネルギー源への依存度を高めることで、環境負荷のさらなる低減を目指している。これには、太陽光パネルや風力発電を活用した施設の電力供給などが含まれる。また、交通インフラの設計と建設においても、環境への影響を最小限に抑えるための方策が取り入れられ、持続可能な都市の実現に向けた効率的な運用が保証されている。これらの取り組みを通じて、ニューヨーク市は公共交通機関の環境負荷を軽減し、持続可能な都市交通システムの構築に努めている。

持続可能な都市交通の発展とは

ニューヨーク市のこれらの取り組みは、環境保全だけでなく市民一人ひとりの健康を促進し、安心・安全な街づくりに繋がっている。持続可能な都市交通の発展は、単なる移動手段の革新に留まらず、より健康で活力のある社会の構築に貢献しているといえるだろう。ちなみに、ニューヨーク市民の憩いの場であるセントラルパーク周辺では、大都会の喧噪を忘れさせてくれるこのような優雅な光景を目にすることができる。セントラルパークの美しい景色を楽しみながら、公園の歴史や周辺の名所について案内を行う、観光客向けの馬車だ。もしかしたらこの馬車が最も環境に配慮したニューヨークの交通機関かもしれない。

文:山口友妃慧(Furusapo:ふるサポ ニューヨーク駐在員)


参考:OneNYC 2050 – NYC Mayor’s Office of Climate and Environmental Justice (cityofnewyork.us)(https://climate.cityofnewyork.us/reports/onenyc-2050/)、Action on Global Warming: NYC’s Green New Deal | City of New York(https://www.nyc.gov/office-of-the-mayor/news/209-19/action-global-warming-nyc-s-green-new-deal#/0)、MTA Zero-Emission Bus Fleet Transition(https://new.mta.info/project/zero-emission-bus-fleet)、6269_NYF_NYC_Ferry_Vision_9.4.indd (edc.nyc)(https://edc.nyc/sites/default/files/2022-07/NYC%20Ferry%20Forward%20Vision%20July%2014%202022.pdf)、

109121 (mta.info)(https://new.mta.info/document/109121)、Complete Streets (ny.gov)(https://www.dot.ny.gov/programs/completestreets)