ボランティア大国アメリカ:活動を通じて見えた意義と魅力
アメリカに移住したら取り組みたかったことの一つ、ボランティア活動に先日初めて参加してみた。アメリカといえばボランティア活動が活発なイメージがあるが、実際に多くの人が取り組んでいる。直近の政府の調査によると、コロナ禍の2020年9月から2021年の間に1億2,470万人もの人々がボランティア活動に取り組んでおり、これは16歳以上の人口の半数以上にあたる。なぜこれほどまでに多くの人がボランティア活動に従事するのか、実際に活動に参加してみてわかったことも踏まえレポートしたい。
ボランティア活動へのアクセスが容易
「ボランティア活動をしてみたい!」と意気込んでみたものの、どのような活動があるのか、参加するためにはどのような手続きが必要か、そもそもこのような情報はどこで入手すればいいのか等、様々な疑問が浮かぶだろう。アメリカでは、ボランティア活動に関する情報が豊富に提供されており、欲しい情報を簡単に入手することができ、すぐに参加しやすい環境が整っている。例えばニューヨークには「New York Cares」というウェブサイトがある。このサイトでは、ボランティア活動を希望するエリア、日時、活動の種類(教育、芸術・文化、食のサービス、公園のコミュニティ活動など)を入力すると、さまざまな団体が募集している情報を一括で閲覧することができる。1987年に設立されたこのサイトは、それまで多くの非営利団体が個別にボランティアを募集していたため、参加希望者が情報を見つけにくかった背景から、一元化してアクセスしやすくしたものである。レストランを回って廃棄前の食材を入手しシェルターに運ぶ活動、街の清掃活動、障がい者と編み物などの交流を通じて自立を支援する活動など、様々なジャンルのボランティア活動の募集が掲載されており、開催日時が直近のものはほとんど枠が埋まっている状態だ。このように、アメリカではボランティア活動に関する情報提供が充実しており、興味を持った人が自分に合った活動を簡単に見つけることができるため、活動に参加するハードルが低くなっている。
学業や就職活動における1つの評価基準
私がボランティア活動に参加したきっかけは、アメリカの大学を卒業した友人に勧められたからである。彼女は在学中、ホームレスのシェルターを作る活動や中国人に英語を教える活動、老人ホームで食事介助を行う活動などあらゆるボランティア活動に従事し、当時大統領だったジョージ・W・ブッシュからバッジと賞状が贈られたそうだ。ボランティア活動を通じて、様々な年齢層やバックグラウンドを持つ人々と交流し、大学の授業では学べない多くのことを得ることができた他、活動実績を履歴書に記載することで学業や就職活動においてプラスの評価になったとも話してくれた。
アメリカの高校や大学では、卒業要件やカリキュラムの一貫として一定時間のボランティア活動実績が必須となる場合や、奨学金プログラムの応募資格としてボランティア経験が求められる場合がある。友人が大学在学中に当時のブッシュ大統領から受け取ったバッジと賞状は、Presidential Volunteer Service Award(PVSA)として知られる。この賞は2003年に設立され、持続的なボランティア活動を行った個人や団体に対して授与される栄誉である。活動時間に応じてブロンズ、シルバー、ゴールド、ライフタイムの各レベルが授与される。PVSAは学生にとって、社会貢献の精神を養い、リーダーシップやコミュニケーションスキルを向上させるための重要な動機付けとなる。この賞の受賞は、大学入試や奨学金申請、就職活動においても有利であり、学生の努力を正式に認めるものとして評価されている。ボランティア活動を通じて得られる経験は、将来のリーダーとしての成長を促し、コミュニティ全体の発展にも寄与するとして重視されており、このようなプログラムを通じて学生に活動を促しているのだ。
実際に活動に参加してみてわかったこと
私が初めて参加した活動は、コロンビア大学で日本語を学ぶクラスの研究発表会において、質問や感想を日本語で伝えるボランティアだ。対面形式で行われる予定だったが、当時キャンパス内でイスラエルによるパレスチナ攻撃に対する大規模なデモがあり、大量の逮捕者が出る事態となっていたため、急遽オンライン形式に変更となった。研究テーマは、日本の食文化や文学、和楽器や果物の歴史など多岐にわたり、日本人ですら知らない興味深い内容ばかりで非常に勉強になった。なによりも、様々な国籍の学生たちが日本について熱心に研究し、日本語で発表する姿に感動し、とても嬉しかった。海外生活を送る中で言語や文化の壁に度々ぶつかり、不自由さはもちろん、時に孤独感や惨めな想いさえすることもある。しかし今回学生との交流を通じて、日本人であることの誇りを再確認し、日本の文化とともに自分自身もアメリカに受け入れてもらえたような気がした。また、異国の伝統や文化、価値観を尊重し合うことの大切さを改めて感じ、今後も謙虚な気持ちで言語や文化について学び理解したいと思わせてくれた。
ボランティア活動の活発化に熱心に取り組んだバラク・オバマ前大統領がスピーチでこのように述べている。
「絶望を感じないための最善の方法は、立ち上がって何かをすることだ。良いことが起こるのを待つのではなく、自ら良いことを起こすことで、世界に希望をもたらし、自分自身にも希望を生み出すことができる。」
実際に活動に参加してみて、アメリカでボランティア活動が人々の成長に大きく寄与すると位置づけられ学業や就職時の評価対象となっている理由、そして多くの人がボランティア活動に従事している理由が見えてきたような気がする。
文:山口友妃慧(Furusapo:ふるサポ ニューヨーク駐在員)
参考:The President’s Volunteer Service Award (presidentialserviceawards.gov)(https://presidentialserviceawards.gov/)、Volunteering and Civic Life in America | AmeriCorps(https://americorps.gov/about/our-impact/volunteering-civic-life)、Volunteering in America: New U.S. Census Bureau, AmeriCorps Research(https://www.census.gov/library/stories/2023/01/volunteering-and-civic-life-in-america.html)、Volunteer | New York Cares(https://www.newyorkcares.org/volunteers?)、ボランティア精神 |About THE USA|アメリカンセンターJAPAN (americancenterjapan.com)(https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/2313/)、
)、ABOUT US – JerseySTEM(https://jerseystem.org/about-us/)